2018.04.12
小山基 Hajime Koyama
東京から地域おこし協力隊として能登島へ
大阪で生まれ育ち、大学卒業後に東京で環境コンサルタントの仕事をしていた小山さん。
第一印象は寡黙。関西人であることに最初はほとんど気づけない。
でも、喋り出すと、そして飲み出すと(?)陽気なラテンなノリを持っている。
元々仕事の関係で小笠原諸島の父島に赴任していたという小山さん。島暮らしは体験済みだ。小山さんは、東京でサラリーマンとして働いていた2015年に、奥さんと当時2才の長男を連れて、能登島で開催されている「うれし!たのし!島流し!~都会を忘れる強制田舎暮らし~」ツアーに参加。
このツアーは、能登島は江戸時代、政治犯の流刑地であったという歴史から、主に首都圏などからの参加者を流人、受け入れる島民が看守となって、田植え「とことん泥まみれの刑」や、「鱈服食べさせられる刑」といった四季折々の島暮らしの体験やグルメが楽しめる。
もともと子育てを自然の豊かな場所でしていきたいと考えていたという。年に4回季節ごとに開催されるこのツアーで、島の自然や生活文化の豊かさ、また、子供が自分の子供の面倒をみたりしてくれたこと、人間関係のあたたかさを感じたのが移住の決め手となった。
そうして地域おこし協力隊として能登島へ。家族と一緒に能登島での暮らしをスタートさせた。
「能登島には海も山もある。その自然との関わり方、暮らしの知恵、島ならではの日々の生活に魅力を感じましたね。年間40万人が訪れる能登島で、地域おこし協力隊として地域課題に取り組む中で、水族館や美術館などの観光施設はあるけれど、島民や日常の暮らしという資源・魅力もあると思うんです。」
外へ向けた観光資源ではなく、いつもの飾らない能登島、その良さを知り、
伝えていきたいと思うようになったという。
サイクリングで能登島の暮らしを感じてもらう
自分が外から来て思った島の日常、地域おこし協力隊としての活動を通じて、能登島の良さをもっと多くの人に楽しく体験してもらえないかと考えるようになった。そして、地元密着型のサイクリングツアー「クラシノサイクル」を立ち上げることにした。
海を感じ、山を感じ、田畑を感じ、島の風景や空気を身体で感じながら自転車で走り、畑仕事をしているおばあちゃん、漁をしているおじいちゃんをはじめとした島民とふれあう。
気が向くところで止まって、深呼吸する。
出会った島民と立ち話をする。
畑を耕すおばあちゃんの悩みを聞く。
漁港で編み仕事をする漁師さんの仕事を眺める。
そんな中から、観光に訪れるだけでは見えない、能登島の暮らしをどんどん感じることができるのだという。
能登島にゆったりと流れる空気、普段のかざらない島の日常の暮らしが垣間見えるツアーは外国からの参加者にもとても好評なんだとか。
島暮らしの驚き
最初に住んでいた鰀目(えのめ)地区では、借りていた家の大家さんの田んぼの手伝いもしていた。「いまはなかなか時間が取れなくて難しいですが、今後田んぼはしてみたいなあとは思っています。」と語る小山さん。
「現在は曲(まがり)地区に住んでいますが、この地区の田んぼは山水をひいているのでお米も美味しい。場所や作る人によっても味が全然違うんだなあと感じます。」
そして、島に住んでいると、家の玄関に近所から野菜や魚などのお裾分けが置いてあったり、呼び止められて食べ物をもらうことも珍しくない。
漁師町である鰀目では魚が大漁にあがると、島のおばちゃんたちが干物を作ってはお裾分けしてくれる。
「特に、大家さんのおばあちゃんが作るイワシの干物は最高ですね。」島の自然と人からの恵みを受け取り、ここでの暮らしの楽しみを実感しているのだとういう。
他にも能登島に住み始めて驚いたことがある。
それは人との距離だ。
引っ越してきたばかりの時に、近所の小学生3人が勝手に家に上がり込んで息子たちと遊んでいたことがあった。最初はとても驚いたが、裏返せばそれは、人と人との距離の近さ、強固な信頼関係の表れでもあった。
島全体が親戚のようで、外からきた人を優しく受け入れ、都会にはない人間関係の深さをここで感じることができた。
移住者との横のつながりもあり、家族ぐるみの付き合いがあったり、子育ての相互協力も行ったりしている。
島で暮らし、人と関わる中で「本当に島の人が好きなんです」と語る小山さんのその言葉から、島への愛情をひしひしと感じるのです。
〜まあそいQ&A〜
Q:お米はどうしていますか
A:お米は島の近所の人からもらったり、買ったり。
Q:イチオシご飯のお供
A:こんかさば(サバのぬか漬け)、魚の干物がイチオシ。
Q:能登島の好きなところ
A:人間関係の深さ、能登島の人の島への愛情
Q:「まあそい」と聞いて最初に頭に浮かぶものは?
A:まあそい=米というイメージ。
プロフィール
小山基(こやま・はじめ)
1984年、大阪生まれ。大阪府立大学大学院卒業後、環境コンサルタントとして東京、小笠原諸島などで勤務。能登島の体験観光プログラム「うれし!たのし!島流し!」をきっかけに2015年に能登島に移住。地域おこし協力隊として、地域の課題に取り組んできた。現在はサイクリングツアー「クラシノサイクル」の運営、耕作放棄地でつくる酒米から日本酒「純米 能登島」を作るプロジェクトなどに携わる。